【行政書士が解説】産業廃棄物収集運搬業の「許可」が絶対に必要になるケースとは?法的根拠とリスク管理を徹底網羅

産業廃棄物収集運搬業許可が必要になるケース

はじめに

皆さん、こんにちは。東京都・千葉県・埼玉県エリアを中心に、産業廃棄物収集運搬業の許可申請手続きを専門にサポートしている、行政書士ライトアップ事務所の米沢です。

日々の業務において、建設業や運送業を営む事業者様から、産業廃棄物の取り扱いに関する数多くのご相談をいただきます。その中で、特に創業間もない事業者様や、異業種から参入された方から頻繁に耳にするのが、以下のような言葉です。

「現場で出たゴミをちょっと運ぶだけなのに、本当に許可なんて必要なのですか?」

「うちはまだ会社の規模も小さいですし、知り合いの現場を手伝うだけだから、許可がなくてもバレないのではないでしょうか?」

結論から申し上げます。その「ちょっとした運搬」であっても、法律上、許可が必要となるケースは皆様が想像している以上に多いのが現実です。そして、「バレなければ大丈夫」という認識は、現代のコンプライアンス重視の社会において、会社の存続を脅かす致命的なリスクとなります。

産業廃棄物の処理については、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下、廃棄物処理法)」という非常に厳格な法律でルールが定められています。この法律は、過去の不法投棄問題などを背景に改正が繰り返され、違反者には厳しい罰則が設けられています。

この記事では、法律の専門用語が苦手な方でも正しく理解していただけるよう、「許可が絶対に必要となる法的な線引き」について、実務経験に基づき徹底的に解説いたします。この記事を読み終える頃には、自社の業務に許可が必要かどうかが明確に判断できるようになるはずです。

1. まず確認すべき「無許可営業」のリスクと重い罰則

具体的なケーススタディに入る前に、もし許可が必要な状態で無許可運搬を行ってしまった場合、どのような事態に陥るのか、その法的なリスクを確認しておきましょう。「知らなかった」では済まされないのが法律の世界です。

刑事罰の対象となります

産業廃棄物収集運搬業の許可を持たずに、他人の産業廃棄物を運搬する行為は「無許可営業」とみなされます。これを行った場合、廃棄物処理法第25条に基づき、以下の刑事罰が科される可能性があります。

  • 5年以下の懲役
  • 1,000万円以下の罰金
  • または、この両方の併科

これは決して軽い罪ではありません。「5年以下の懲役」という規定があることからも分かる通り、悪質と判断されれば逮捕され、実刑判決を受ける可能性もある重大な犯罪です。

法人には「3億円以下」の罰金刑

さらに恐ろしいのが、平成22年の法改正によって強化された「法人重課(両罰規定)」です。

従業員や代表者が業務に関して無許可営業などの違反行為を行った場合、行為者本人だけでなく、その法人が所属する会社(法人)に対しても罰金刑が科されます。その上限額は、なんと3億円です。

中小企業にとって、数千万円から億単位の罰金は、事実上の倒産宣告に等しいでしょう。国はそれほどまでに、産業廃棄物の不適正処理を重く見ているのです。

取引先(排出事業者)も処罰されます

リスクは自社だけにとどまりません。無許可業者に運搬を委託してしまった「排出事業者(元請業者や依頼主)」も、委託基準違反として処罰の対象となります。

  • 排出事業者への罰則:5年以下の懲役 または 1,000万円以下の罰金

もし、あなたの会社が無許可営業で摘発された場合、仕事を依頼してくれた元請業者やお客様にも警察の捜査が及び、名前が公表されてしまう可能性があります。その結果、取引停止、損害賠償請求、社会的信用の失墜といった連鎖的なダメージを受けることになります。許可を取得することは、自社を守るだけでなく、大切なお客様を守ることにも繋がるのです。

【参考リンク】

環境省|廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)の概要

https://www.env.go.jp/recycle/waste/laws.html

(環境省の公式サイトにて、法律の目的や罰則規定の詳細を確認できます。)

2. 許可が「絶対に必要」になる3つの判断基準

では、具体的にどのようなケースで許可が必要になるのでしょうか。

産業廃棄物収集運搬業の許可が必要かどうかは、基本的に「誰の廃棄物を」「誰が」「どこへ」運ぶかによって判断されます。

ここでは、誤解が生じやすく、かつ許可が必須となる代表的な3つのケースを解説します。

ケース1:自社以外の「他人」の産業廃棄物を運ぶとき

これが、許可が必要となる最も典型的かつ基本的なケースです。これを「受託運搬」と呼びます。

  • 誰のゴミか?:排出事業者(仕事を依頼した元請業者、メーカー、工場など)
  • 誰が運ぶか?:あなたの会社(運搬を受託する側)
  • どこへ運ぶか?:中間処理施設や最終処分場

【具体例:運送業者が建設現場から廃棄物を運ぶ場合】

例えば、あなたが運送会社を経営しており、建設会社A社から依頼を受けたとします。「A社の建設現場から出た廃材(木くずやがれき類)を、トラックで処分場まで運んでほしい」と頼まれました。

この場合、建設現場のゴミの排出事業者は「建設会社A社」です。あなたの会社は、A社という「他人」の廃棄物を運ぶことになります。したがって、この時点で産業廃棄物収集運搬業の許可が絶対に必要となります。

一般貨物自動車運送事業の許可(いわゆる緑ナンバー)を持っていても、産業廃棄物を運ぶことはできません。産業廃棄物を運ぶためには、別途、廃棄物処理法に基づく許可が必要なのです。

ケース2:グループ会社間の運搬でも許可が必要

「親会社のゴミを子会社が運ぶなら、身内だから大丈夫だろう」と考える経営者様は少なくありません。しかし、これは法的に大きな誤解です。

  • 誰のゴミか?:親会社A社、またはグループ会社C社
  • 誰が運ぶか?:子会社B社

法律上、親会社A社と子会社B社は、資本関係があったとしても、それぞれが独立した「別人格(別の法人)」として扱われます。したがって、子会社B社が親会社A社の廃棄物を運ぶ行為は、「他人の廃棄物を運ぶ行為」とみなされます。

この場合、運搬を行う子会社B社は、産業廃棄物収集運搬業の許可を取得しなければなりません。

※例外として、親子会社間での廃棄物処理に関する特例認定制度なども存在しますが、認定を受けるためのハードルは非常に高く、一般的な中小企業においては許可を取得するのが原則となります。

ケース3:「有償」か「無償」かは関係ない

「お金をもらわずに、サービス(無償)で運んであげるのだから、許可はいらないはずだ」

これも、非常に多くの方が陥る間違いです。

許可が必要かどうかは、「運賃や処分費をもらっているかどうか」ではなく、「他人の産業廃棄物を運搬する行為があるかどうか」で決まります。

廃棄物処理法において、「業として」行うとは、反復継続して行われる行為を指し、営利目的かどうか(有償か無償か)は問われないと解釈されています。

たとえ「運搬費0円」として請求書を発行しなかったとしても、事業活動の一環として他人の産業廃棄物を運搬すれば、許可が必要です。

3. 【建設業界の方へ】特に注意すべき「元請・下請」の関係

建設業、解体業、リフォーム業などに携わる皆様は、特に注意が必要です。建設工事に伴って発生する廃棄物には、特有のルールが存在するからです。

排出事業者は「元請業者」になる

建設工事(新築、増改築、解体など)から出る廃棄物の「排出事業者(ゴミの責任者)」は、原則として「元請業者(発注者から直接工事を請け負った業者)」であると法律で定められています(法第21条の3)。

実際に現場で作業をしてゴミを出したのが下請け業者であったとしても、法律上の排出責任者は元請業者になります。

下請け業者が運搬する場合は許可が必要

上記のルールに基づくと、以下のようになります。

  1. 現場の廃棄物は、法律上「元請業者」のものである。
  2. それを「下請け業者」が運搬する。
  3. つまり、下請け業者は「他人(元請業者)の廃棄物」を運ぶことになる。

したがって、下請け業者が現場の廃棄物をトラックに積んで処分場へ運ぶ場合、下請け業者自身が産業廃棄物収集運搬業の許可を持っていなければなりません。

「自分たちの作業で出たゴミだから、自分で運ぶ(自社運搬)」という理屈は、下請け業者には通用しないのです。この点を誤認していると、無自覚のうちに違法行為を行ってしまうことになります。

【参考リンク】

東京都環境局|建設廃棄物の適正処理について

https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/resource/waste/construction_waste/index.html

(東京都の公式サイトにて、建設廃棄物の処理責任や元請・下請の役割分担について詳しく解説されています。)

4. 許可が不要なケース(自社運搬)とその厳格な基準

ここまで「許可が必要なケース」を解説してきましたが、許可が不要なケースもあります。それは「排出事業者が、自ら排出した廃棄物を、自ら運搬する場合(自社運搬)」です。

ただし、「許可がいらない=自由に運んで良い」ではありません。自社運搬を行う場合には、廃棄物処理法施行令で定められた厳格な「運搬基準」を遵守しなければなりません。

自社運搬の遵守事項

もし許可を持たずに自社運搬を行う場合は、以下の基準をすべて満たす必要があります。

  1. 車両の表示義務運搬するトラック等の車体の両側面に、「産業廃棄物収集運搬車」という表示、および「会社名(氏名)」を表示しなければなりません。文字の大きさなどの規定も決まっています。
  2. 書面の携帯義務許可業者であればマニフェスト(産業廃棄物管理票)を携帯しますが、自社運搬の場合でも、以下の事項を記載した書面をドライバーに携帯させる義務があります。
    • 排出事業者の氏名または名称、住所
    • 運搬する産業廃棄物の種類、数量
    • 運搬の開始日、終了日
    • 積載場所、運搬先の名称、所在地など

これらが守られていない場合、検問などで警察や行政から指導を受けたり、場合によっては改善命令が出されたりすることもあります。「許可がいらないから何も準備しなくて良い」わけではない点に十分ご注意ください。

【参考リンク】環境省 産業廃棄物収集運搬車への表示・書面備え付け義務

https://www.jwnet.or.jp/waste/knowledge/rule/display.html

(車両への表示方法や、携帯すべき書面の内容について図解付きで解説されています。)

5. あなたの会社は大丈夫?最終チェックリスト

最後に、これまでの内容を踏まえたチェックリストを作成しました。自社の業務内容と照らし合わせ、許可が必要かどうかを再確認してください。以下の項目のうち、ひとつでも当てはまる場合は、産業廃棄物収集運搬業の許可が必要です。

基本的な運搬形態

  • 他社の産業廃棄物を運搬する予定がある(他人のゴミを運ぶ行為は、原則としてすべて許可が必要です。)
  • 産業廃棄物を有償または無償で運搬する(報酬の有無にかかわらず、運搬行為があれば許可が必要です。)
  • 下請けとして入った現場の廃棄物を運搬する(元請業者の廃棄物を運ぶことになるため、許可が必要です。)

取り扱う廃棄物の種類

  • 工場、建設現場、事業所から出る廃棄物を運ぶ(例:がれき類、金属くず、廃プラスチック類、木くず、ガラスくず・コンクリートくず及び陶磁器くず、汚泥など)
  • 特別管理産業廃棄物を扱う予定がある(例:廃酸、廃アルカリ、感染性廃棄物、PCB廃棄物など)※これらを運搬する場合は、通常の許可ではなく「特別管理産業廃棄物収集運搬業許可」が別途必要です。

運搬方法

  • どのような車両で運ぶか(ダンプ、トラック、軽トラック、バンなど、車両の種類やナンバープレートの色(緑・白)に関わらず、許可の要否判断は変わりません。)
  • 積替え保管を行うか(運搬の途中で、自社の倉庫や敷地で廃棄物を一度降ろし、選別や保管を行う場合は、「積替え保管を含む」許可が必要です。これは通常の許可よりも要件が厳しくなります。)

誤解しやすいケース

  • 顧客から引き取った廃棄物を運ぶ(例:機械のメンテナンス業者が、交換した古い部品(産廃)を持ち帰る場合など。)
  • エアコン工事で取り外した業務用エアコンを運ぶ(家庭用エアコンは家電リサイクル法の対象ですが、業務用エアコンは産業廃棄物に該当するため、運搬には産廃の許可が必要です。)

まとめ:法令遵守は企業の信頼を守る「盾」になります

繰り返しになりますが、産業廃棄物収集運搬業許可が必要かどうかは、「誰のゴミを」「誰が」「どこへ」運ぶかによって法的に判断されます。

「これくらいなら大丈夫だろう」という自己判断は、会社の存続を揺るがす大きなリスクを招きかねません。逆に、適切な許可を取得し、法令を遵守して業務を行うことは、取引先や社会からの信頼を高め、貴社のビジネスを強固なものにするための最大の「武器」であり「盾」となります。

特に、これから事業を拡大していこうと考えている事業者様や、コンプライアンス強化を求められる大手企業と取引を行いたいと考えている事業者様にとって、産廃許可の取得は避けて通れない重要なステップです。

「自社のケースでは本当に許可が必要なのか詳しく知りたい」

「許可を取りたいが、要件を満たしているか診断してほしい」

「忙しくて書類を作成する時間がないので、手続きを丸投げしたい」

このようにお考えの方は、ぜひ一度、行政書士にご相談ください。

行政書士ライトアップ事務所では、お客様の事業形態や将来のビジョンを丁寧にお伺いした上で、個別のケースに応じた最適なアドバイスと、迅速な許可取得サポートを提供しております。

複雑な法律の手続きは専門家に任せて、皆様は安心して本業の発展に専念してください。まずはお気軽なお問い合わせをお待ちしております。


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